不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 扉が閉まればジリアンと二人きりになる。

 口火はジリアンが切った。

「お茶でも飲みながら話そう。いろいろ聞きたいのだろう?」

「えぇ」

 さぁ、戦闘開始……とまではいかなくても、彼女には怒る権利がある。いきなり連れてこられたのだから。

 着たこともない豪勢なドレスだから裳裾さばきが上手くいかず、バサバサと内スカートを蹴散らしながら椅子に腰を掛けた。

 ――やっぱり、難しいわね。裳裾さばきって……。

 ジリアンは対面にあるもう一つの椅子に座るのかと思っていたら、彼は立ったままで右手の人差し指を小テーブルの端に軽く突く。

 まゆこをちらりと見た。

「……まずは、誰にも聞かれないようにする。――《ヴォワ》」

 最後の一言は小さな声だった。反応は顕著だ。テーブルの上に白い魔法陣が描かれてゆく。円と文様が完成すると、まばゆい白色の光が放たれた。

 机の上に置かれたカップや菓子器などものともせず、魔法陣は透けて広がり、テーブルを越えて大きくなってゆく。

 まゆこの身体をすり抜け、部屋全体を中に入れると目に見えなくなった。
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