不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
「魔法?」

「そうだ。ここでの会話を他の者に聞かれないために、この部屋に限定して声を遮断した。魔法士にも聞こえないえだけの壁を作った」

 彼女の質問に答えながら、ジリアンは対面の椅子に腰を掛ける。

 優雅な動作に見えるのは、状況のせいかのか、公爵様だからなのか。

 開いた窓から風が入ってきて柔らかなベールブロンドが揺れた。

 紺碧の瞳と相まって、至近距離で見ると本当に綺麗な男性だとしみじみと思う。

 笑わないのが惜しい。

「窓は閉めるか?」

「いいえ、風が気持ちいいからこのままで。……ジリアン様は閉めたいの? ……えと、閉めたいとお思いですか?」

 身分制度があるなら、庶民としては敬語の方がいいだろうと舌を噛みそうになりながら言った。すると彼は、目元をわずかに和ませる。

 ――うわ。笑った? いやいや、気のせい……。きっとね。

 わずかな気配の違いとはいえ、表層の怜悧さが少しだけ剥がれたような気がした。

「ジリアンでいいぞ。最初のままの言葉づかいで構わない。――マユコなら」

 まゆこは『う……』と詰まった。意味深すぎる。
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