誰からも愛されない

✛✛忍と楓


「忍さん。
嫌っ、社長っ!!
もう、帰ってください。
お願いします!!!」
目の下に隈を作って、訴える楓。

クリスマスの後から
ずっと忍は、会社にいた。

会社には、シャワーもあるし
スーツも予備がおいてある。

必要ならクリーニングにも出せるし
新しいものを揃えればよい。

食事は、適当に食べることも
できるが·····


忍は·····

寝てもいない
ちゃんと、食べてもいない
私生活がめちゃくちゃになっていた。

そんな忍に付き合っていた楓だが
ほとほと疲れてしまった。

こんな生活をして
もう·····十日が······過ぎた‥‥

そろそろ自分も危ないと感じていた。
忍は、そんな楓を無視して
仕事をこなす······

楓は、床に膝をついて
「頼みます。忍さん。
このままでは、二人とも病院送りになる。」
と、言うと。
「‥‥‥‥帰りたく····ないんだ····
楓は、帰りなさい。」
「そんな忍さんを置いて
自分だけなんか、帰れませんよ。
彩心さんは、実家ですか?」
「·······
  ···あ·····こは·····い······ない·····」
「えっ、どうして?」
「だから、いないんだ!!
彩心は·······もう‥‥‥っ‥‥」
「なっ、なんで?どうして?」
「私といると彩心は、傷つく
守りたいと、護れると思っていた
だが、現実は、どうだ!!
結局·····彩心自身が·····決めた。
俺は、従うしかない······
だから‥‥‥
彩心のいない家に帰りたくない·····
彩心の匂いの残る家に···帰れないんだ····
・・・・探して・・さ・・迷うから‥‥」

楓は、余りにも悲しげに苦しげに
話す忍に言葉が······出なかった······。
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