朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】


「元々、咲桜を否定しまくったのは箏子先生でしょう。あの子の何が気に入らないんですか」


「………」


「理由はなしですか。じゃあ、咲桜がどこに嫁に行こうと箏子先生が関知するところではないでしょう。咲桜の父親は私です」


「……っ、夜々子! お前も何を黙っているんです! お前はあの子の母代わりを名乗っていたでしょう!」


「いえ、勝手に乗り込んだのは母さんでしょう。それに……」


「お前が言わないならわたくしが言います! 咲桜を返しなさい! あの男の家はどこです!」


「んー、そうですねー」
 

在義さんらしくない語尾を伸ばした返事に、固まっていた咲桜がゆっくり融けた。


「――というわけらしい」


「ああ。急に頼んで悪かったな」
 

咲桜の背に手を当てて明るい方へ導いた俺は、『在義さん』にそんな口をきいた。

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