愛のない、上級医との結婚

✳︎ ✳︎ ✳︎

なにが悪かったのだろう。
夕飯の準備をしながら、私はまだ、朝の高野の表情の意味を考えていた。

喜んでくれると思った。
ありがとうと、昨日のように言ってくれると、そう思っていた。
けれど高野はなんとなく浮かないような、戸惑うようなそんな表情で。

ーーもしかしたら何の意味もない表情だったのかもしれない。
別に気にしなければいいのに。日曜日をこんな無意味な悩みで潰してしまうなんてどうかしている、と思いながらため息をひとつ吐く。

“帰って来るけれど、夕飯は要らない”
その意味深な言葉にもモヤモヤしながら、かろうじて二人分になり得てしまう量の夕食を作っている自分にもモヤモヤする。

「あ、余ったら明日の朝に私が食べようと思って作ってるだけであって!
 別に高野先生も食べるかなーって思って作ってる訳じゃないんだからっ!」

って、どこのツンデレだよ私。という突っ込みも含めて一人芝居をしていた時、ガチャリと玄関のドアの鍵が開く音が聞こえた。

パッと顔を上げて、リビングのドアが開くのを待って、ーーあまりの忠犬っぷりに自分で瞬時に恥ずかしくなって顔を下に向けた。

「……ただいま」

入ってきたその姿を、まるで気にしていないように振る舞うためだけに、つんっと横目だけで捉えて。

「お帰りなさい、高野先生。お疲れ様です」

一日中、高野の言動の意味を考えてたなんて全くわからないように、他人行儀に声を掛けた。

< 43 / 43 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:18

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
これは、意に反して 結婚したくない幼馴染に結婚を申し込まざるを得なかった侯爵令嬢が、 彼に絆されるまでの話。
嘘が私に噛み付いた

総文字数/8,310

恋愛(オフィスラブ)12ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
大きな会社の飲み会。 周りはガヤガヤと煩くて、 誰も私達の話なんか聞いちゃいない。 ビール5杯を飲み切ったところで どんな流れかは記憶にないが 私は笑って同期の篠塚にこう言った。 「いいねいいね!暇だし付き合っちゃお!」 fin.2021.3.23 2021年エイプリルフール短編
紅茶色の媚薬を飲まされて

総文字数/9,093

ファンタジー15ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
その日、王の命令で、 ネルは意図せず媚薬を飲むことになりました。 目の前には、意識してる、男の人がひとり。 18.4.1〜16 エイプリルフール短編

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop