一匹狼くん、拾いました。





「三上くんだよねー?隣の席だし、これからよろしくね?」


5月。



ゴールデーンウィークも空けた春真っ盛りの日、俺は席替えで初対面の女と隣同士になった。





「……あんた誰」



「立花!立花楓(タチバナカエデ)!!よろしく三上くん!!」




夕焼け空のように輝く、外ハネした綺麗なオレンジ色のショートカットの髪。
二重の茶色くて大きな瞳。





お転婆感を醸すその子は、俺に屈託のない笑みをむけた。




俺はその日、同級生の笑顔を初めて見た。



…友達なんて、作ろうとしてこなかったから。




生まれてこの方、自ら孤立を選んで生きてきた。





それなのに、俺は





「………ミカって呼んで。よろしく、立花」







気がつけばそう言っていた。




無意識のうちに、そう言葉を紡いでしまっていた。




地獄に道連れにしちゃいけないって、分かっていたハズなのに。




その日、本当の友達が生まれて初めて出来た。




そしてその日、俺の人生の歯車が、たぶん、壊れた。










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