嘘つきピエロは息をしていない
「もしかして部のことで頑張ってくれて。それでひと悶着あった?」
「ぜ、全然、部活関係の、ことでは」
あたふたしていると「やっぱりな」と見抜かれてしまった。鋭すぎる。
「すまなかったな」
「えぇ!? いや、部長が謝ることなんて……!」
「いいや私の責任だ。芝居に集中させてやれなくて、ごめん。せっかく入部してくれたのに」
「そんなこと……そんなことないですよ! まだ数回しかお会いしてませんが、部員の皆さんみんないい人ですし! 楽しいです!」
「ありがとう吉川。部の危機を乗り越えられるように全力で尽くす。それが使命だと思ってる」
「私も頑張ります!」
「根を詰めすぎないこと。身体が資本だから。力抜いて」
「はいっ!」
「それが力入ってるんだって」
はは、と笑う部長は、キラキラしている。
「じゃあ」
「はい!」
「まあ、人というのは、本当ににどうでもいい相手にはそうやってムカつきさえしないもんだけどな」
(……え?)
「なにか言いました?」
「いいや? また部活でな、吉川」
演劇部の活動は、基本的に週に三日。
秋の学祭前には毎日稽古があるらしい。
もちろんそれ以外でも個人で発生練習をしたり台本を覚えたりと、いくらでもやれること、やるべきことはある。
靴箱の前でローファーから上靴に履き替える。
この靴、高校生っぽくてカッコイイなと思い買ってみたけど、まだ慣れないなぁ。
昨日履いていたのが中学の頃のスニーカーだったら、ナイキくんのこともうちょっと追えたと思う。
「って、どうでもいい。あんなダサ丸眼鏡」
「なんだと?」
ウワサをすれば――、ナイキくん登場だ。