嘘つきピエロは息をしていない


「なぁ。さっきの美人、誰?」

 部長といたところ、見られてたのか。

「関係ないでしょ」

 すると、ナイキくんが私を頭から足のつま先まで眺めたあと「同じ女とは思えないな?」と呟いた。

「うるさいなぁ!」

 ひょっとしてナイキくんは部長みたいな女性が好みなのかな。

 だとしたら私より部長に誘ってもらった方が脈あるかもしれない。

「いや、だから、このクソ丸眼鏡は必要ないんだってば!」
「だんだん俺のあだ名酷くなってねぇ?」
「それじゃ、まるおくん!」
「はぁ? ズバリ! そうでしょう! とか言わねぇぞ俺は」

 やばい今の返しちょっと面白かった。

「……なにか用ですか」
「もう俺のことは欲しくないのかよ」
「いらない!」

 すると、ナイキくんが、ニヤリと笑った。

「でも俺、さっきの女に負けないくらい美しいだろ?」

 なにそのナルシスト発言。

「知ってるし。ナイキくんが、めちゃくちゃ美形なこと、くら……い」
「悔しそうに俺を美しいって言う吉川、傑作だな」
「はぁ!?」

 ナイキくんは幾ら顔がよくても性格に問題がありすぎるからイケメンではない!

「嫌味言うために声かけてきたの? サヨナ――」
「悪かったな」

(……え?)

 ナイキくんから、笑顔が消える。

「その、なんだ。お前が一生懸命やってることバカにして」
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