だったら俺にすれば?~オレ様御曹司と契約結婚~

(すぐにこの場を立ち去ろう!)

 そう思い、半歩足を踏み出した玲奈だが、いらぬことに気がついてしまった。
 瑞樹の頬に、くっきりとした手形が浮き上がり始めているのだ。先ほどの女性の平手打ちは、相当な威力があったらしい。

 今はたまたま人目がないが、このままでは誰かに見られる恐れもある。

 彼は玲奈の勤める会社の上司だ。

(さすがに放ってはおけないかも……)

 迷ったのは、ほんの一瞬だった。

「あの、ちょっと待ってください!」

 意を決した玲奈はくるりと踵を返し、パウダールームの中に飛び込むと、持っていたハンカチを流水で冷やし、固く絞って廊下に戻る。

 南条瑞樹はそこにいた。
 ただ、玲奈の行動の意味がわからないのか、怪訝そうな表情をしている。

「これ、使ってください」
「は?」

 いきなり差し出されたハンカチを見て、瑞樹はさらに眉をしかめた。

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