だったら俺にすれば?~オレ様御曹司と契約結婚~
「あっ、汚くないですから。今日の合コンのために下ろしたばかりで、新品ですから使ってください。返さなくていいので。では失礼します!」
彼に労わりの気持ちを持ったわけではない。これはただの親切だ。
玲奈は早口でそう告げると、半ば無理やり瑞樹の手の中に押し付けて、慌ててレストランへと戻ろうとしたのだが――。
「待て」
後ろから腕が伸びてきて、玲奈の肩を抱く。そしてそのまま緩やかに引き寄せられて、気がつけば壁と、瑞樹の片腕の中に、閉じ込められていた。
身長差は二十センチ以上ある。だが顔が近い。瑞樹がそのハンサムで精悍な顔を近づけてくるからだ。
「なななっ、なんですかっ!?」
今まで遠くからしか見たことがなかった御曹司の顔が至近距離に迫り、玲奈は完全に動揺していた。
「なんですかって……んー……そうだな。タクシーが来るまで俺が暇だろ?」
玲奈が渡したハンカチで左の頬を押さえ、右腕は玲奈の進路を塞ぐように壁を押さえている。
呼び止めてからの壁ドンは電光石火の素早さだったが、どうやら御曹司の暇つぶしになれと言われているらしい。