王子は冒険者になる!


「あら、チェース。
 食堂の仕事は終わったの?」

「うん!今日はお昼までだったから、
 午後は依頼を受けようと思って。」

受付のニカ姐さんはにこにこと笑った。
ちなみに、俺の冒険者レベルはやっとEランク。
下から二番目だな。

Cぐらいになれば 討伐や特殊依頼で
冒険者だけで食べていけるそうだ。

「あらぁ。チェース。
 これはちょっと難しいわよぉ。『水』の中級が必要よ。」
「あと、浄化だから「光」ね。」

手に持った依頼書を
ニカ姐さんとイチカ姐さんが覗き込む。
ちなみにサンカ姐さんもいる。
エルフの三姉妹だって。(年齢はシークレットらしい)

「光かぁ。」

どうしようかな。
「光」の魔力はあんまり使うと・・・目立つだろうしなぁ。

水は『中級』位までなら余裕だけど

依頼書をちらりと見る。
水中地底洞窟の周辺浄化 が依頼書だ。

※必須 光の浄化
 水中探索あり(水中級程度)


報酬はお金のほかにおいしい新鮮な魚 ってあるんだもん。
募集人数も多いし、
危険というより大量に魔力が必要な作業なのかな?

「人数も20人って多いからね。
 光が少しでも使えたら『増幅』するはずよ。」

「光は難しいわよね。
 発動しないし・・・少ししか反応しないし。」
「やだ、ニカ。だから多くの冒険者集めてるんじゃない?」

「そうねぇ。冒険者だったら
 少しくらいなら光使える人もいるものね。」
「チェースは少しくらいなら使える? 
 まだEランクだから、無理かしらねぇ?」

「え?えっとぉ。?」

ん?
あれ?
光の魔力って俺が思っている以上に 貴重なモノ?

「す、すこしは、使える のかなぁ?」
「まぁ、すごいのねぇ、チェース。
 『魔術師』の才能があるんじゃない?」
「あら、イチカ。魔法剣士がいいんじゃない?」

きゃっきゃっと 楽しくカウンターを独占していたら
後ろから 低ーいだみ声が響く。

「おい、坊主。
 さっさと退けや。」
「あっ。すいません。」

強面のおっさんがぐいっと 受付カウンターに割り込む。
迫力あるなぁ。
ベテランの冒険者だろうか。

「ん。なんだぁ。てめぇも
 その依頼うけるのか?」
「えぇ。どうしようかなと。」

「光が少しでも 発動するなら心配ないぞ。
 俺が『増幅』するからな。」

ずいっと 顔を近づける。
目力すごっ てか、迫力ありすぎるっ。

「くすくす。チェース。
 大丈夫よ。ダイラナイスは元騎士で上位の『増幅』魔法が使えるのよ。
 ダイナライスもいくのね?」

「あぁ、そうだ。
 というか、まだオレは騎士だって。
 ほれ、登録してくれ。そっちの坊主も。」
「あ、あの、俺は・・・」
「なんだぁ。Eランクなのかよ。
 経験を積むいいチャンスだな。よし、お前もこい。」

おーい、強引だな!!
って
ニカ姐さんは面白がって「いってらっしゃーい」なんて手を振る。


俺は、この 強面のおっさん冒険者ダイナライスに
引きずられるように
集合場所へと拉致された。


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