王子は冒険者になる!

ジョイルくん♪


**
ジョイルの話
虐待を意とする表現があります。
苦手な方は129まで飛ばしてください
****

紫っぽい髪で ふかい藍色の瞳を持つ少年。
ジョイル=ワークシャボン

ワークシャボンの元領主さまに引き取られて
現領主のロックパティ様の義弟だ。

彼の幼児期は波乱万丈に満ちたものである。



彼の生家はリザマート家である。

リザマート家は呪術のリザという通り名があり、
魔力の流れを見たり 大地の地流の流れを感じるなどの
『魔力感知』に優れているのは よく知られているが、
貴族間でひそかに重宝されているのは
『呪い』と『結界』 そして『反射』だ。

リザマート家は魔力を見ることが出来る 家系だ。
そのよく見える『目』を駆使して
『陣』を読み解く。

結界の穴や 防御の隙を突くような『呪い』をかける。

それだけではなく 結界や その攻撃魔法に対する
『反射』も得意としていたので騎士だけではなく、
『暗部』の幹部によく名を連ねる家系だ。


ジョイルはそのリザマート家の分家の出だ。

両親ともに その、リザマート家の特徴である 魔力感知の術が
特に優れているわけではなく、他の人よりはわかるだけで
優秀な「リザの術者」ではなかった。
それでも分家としてリザ本家のサポートや『呪術』に使う素材を育てたりと
本家からも重宝される 優秀な人たちであった。

ジョイルが生まれるまでは。


「賢者の目」と呼ばれる「魔眼」を持った
ジョイルが生まれるまでは。


***


「ですから、その力を本家で・・・」
「何仰るの!!ジョイルはうちの子ですわ!!」
「そうです。お帰りください。
 いくら本家だからって・・・強引すぎます!」


扉を閉めているのに廊下まで聞こえてくる言い争う声。

廊下の隅からこっそり
その声を聴く。

小さな手をそっと握られて
ジョイルは はっ と上を見上げる。
にこやかな笑顔を浮かべた 父の執事のノービックだ。

「ジョイル坊ちゃん。
 ほら、一緒にお庭に行きましょうか?」

「ノービック。あのね。僕・・・
 僕が、いけないのかなぁ?」

「・・・ほら、坊ちゃん。いいお天気ですよ。
 旦那様も、奥様もジョイル坊ちゃんのことを愛しておいでですよ。」

ノービックはにこやかに手を取って
声の聞こえない庭のほうへと誘導する。

ジョイルは、生まれたときから
その異質な魔力をまとって生まれた。

仮にもリザマートの人間である 父は、その異質さを感じた。
母はリザマート家の魔力感知はないものの
優秀な陣を読み解く術者であったため、
生まれた我が子に 旦那様が大急ぎで魔力封じの陣を展開したのを見て
激しく動揺した。

その異質さはすぐに確信に変わる。

おぎゃぁと産声をあげる かわいいわが子には
魔力を読み解く「魔眼」 魔力感知を数値化してみる
力が瞳に宿っていたのだ。

リザマート家の本家にたまに現れる最高『呪術の瞳』『当主の証』といわれる「魔眼」それを単なる分家である夫婦の息子に現れてしまった。

分家が本家を超える力をもっていると知られたら争いの種だ

目の力を封じようと、父親が封じようと術を展開して施そうとしたが、
大きな光の反転術が発動されたのだった。
攻撃魔法を反射する 「光の反射」が もともと持っている。

その事実に、両親は 呆然となり、
赤ん坊を取り上げた 医師や乳母も ただ おろおろするだけだった。

ジョイルが生まれてまだ1時間もたたない 出来事だ。


良くも悪くも、次世代のリザマートをしょって立つかもしれない
賢者の目をもった、
光の反射をまとった 子が生まれた。

本家のリザマート家も 4つある分家にも
この話が駆け巡るのだった。

< 124 / 150 >

この作品をシェア

pagetop