王子は冒険者になる!

私はセリィを引き寄せるように
セリィの頭を撫でた。

あぁ、かわいそうに。

「こんなに、悲しんでいる原因は
 フランチェスコ王子だろう?セリィ?」
「お父様・・・。
 私は・・・」
「うん。大丈夫だよ。もし辛いなら
 婚約をやめたってもいいんだよ。」
喜んで破棄するために全力を尽くそう。

「えっ!?い、嫌ですっ。どうしてお父様まで
 そんな事・・・私は フラン様を・・・お慕いしているのにっ」

こっちが言葉に詰まる。
いったい、何を言われたんだ?

「セリィ。フランチェスコ王子から何を言われたんだい?」
「・・・お顔がすきなのか?と。」

あぁ、確かにフランチェスコ王子は綺麗な顔立ちだしな。
そのせいで、嫌味や視線を集めやすいだろうな。
でもそれは武器だし魅力の一つだろう?

思わず眉間にしわを寄せる。
セリィは そんな私をみて
軽く首を振った。

「お父様。あの、違うんです。
 私が・・・っ。」

セリィが静かに涙を落とす。

「私が、輝くような笑顔と優しい声が好きだと伝えたから
 それが無くなったら、去っていくのか?と聞かれて・・・っ。
 私、私・・・ 答えられなかったんですっ。」

セリィの涙が止まらない。
・・・あんの、くそ王子っ。
私の天使をこんなにも悲しませやがって。

優しくもう一度頭を撫でてやり、
そっと涙をぬぐう。

「セリィ。とっさのことで言葉が出なかったんだね?」
「はい・・・。
 別の、権力者のご子息を紹介すると、仰ったので
 その・・・私・・・ フラン様に・・・嫌われているかもしれません。」

あの、くそ王子、ヤル。

っと本気で手にかけたら一家没落だ。
落ちつけ、俺。

「せ、セリィ?
 もし、こんな悲しい思いをするんだったら
 王子との婚約を破棄するが・・・「嫌です!!!」」

と、セリィが怒鳴った。

「私はっ。フラン様を・・・お慕いしているのですっ。
 その、お顔が傷ついたり、
 お優しい言葉をかけていただけなくなっても
 立場がなくなっても、好きでいられるかはわかりませんっ。
 でもっ!!好きなんですぅーーー!!」

うわぁぁーーー と、大声を上げて泣いた。
なにか言ってるが支離滅裂だが。

あぁ、あのくそ王子、こんなにもセリィの心を奪っているのか。

ただでさえムカムカとした感情に
さらに怒りを追加される。


「セリィ。私に任せなさい。
 きちんと、フランチェスコ王子に セリィに優しくするよう
 お願いしてみよう。」
「・・・っ。お父様。本当?」
くすん。と涙を拭いて
セリィが少し微笑む。

「あぁ、かわいいセリィ。
 君が望むなら、父はその願いをかなえよう。
 さっそく、王子に面会を求めて、進言しよう。」
「お父様!ありがとうございます! 
 大好きですわ!!」

おぉ!天使がいる!


さて、今からあんの くそ王子に 面会の手続きと・・・

モンレ公爵はたぐいまれなる
その頭脳を巡らせるのだった。

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