王子は冒険者になる!


えぇ、あの、モンレ公爵ですよ。

俺の婚約者のセリィローズ嬢のお父上。
そんで、この国の宰相。

いつも王の隣で しかめっつらの髭面の男、だろ。
俺の耳に届くほどの『頑固で自分にも人にも厳しい男』だろ?

そして、

勝手に、今日の授業の講師にキャンセルの手配もして
俺の時間を調整したうえで

お時間があれば、謁見をお願いします。

だと?

うーん。この 手慣れている感・・・すげぇな。

この手のひらで転がしてやるぜっていう
策略と追い詰め方。

無理だと 言わせないやり方っていうの?

こんな、10歳のくそガキ相手に 逆にすごいな。



「フランチェスコ王子。
 訪問者がいらっしゃいました。」

少し開けられていた部屋のドアを軽くノックして
リィナが少し緊張した声で、来客を告げた。

ここはいつも勉強のために
使っている部屋だ。

机と向かい合わせるように すわり心地のいいソファがある。
訪問者を迎えるのはどっちがいいかな?

少し考えてからいつもの堅いシンプルな椅子に腰かけて
教科書を広げる。今日勉強予定だった歴史書。

勉強頑張っているお利口さんに見えるかな?


「入れ」
と告げた。

エラそうだよなぁ。俺、10歳。

一応、言っておくがこれが普通だからな。
一応『王族』で『第二王子』だから、
臣下に 丁寧語ではいけないし、的確な用件のみを伝える。

みたいな、感じなんだよ。
あんまりフレンドリーだと余計マナーの時間を増やされる。

あー、面倒だな。


「失礼します。」

声がして、ちらりと顔を上げる。
俺は、席は立たずに、「何か?」と一言だけ告げる。


明らかに不機嫌そうなモンレ公爵。
いま、明らかに舌打ちしましたよね!?
怖いんだが。

「・・・今日は、急な申し出を受けていただきありがとうございます。
 フランチェスコ王子。」
低音の声が、静かに響く。

ちらり、と 見て、
手元の教科書に目を落とす。「何用か?」

と、わざと そっけなく言ってみる。


そもそも、彼の訪問の意味が解らない。
セリィ関係だろうか。

っていうか、セリィのことだろうけどさ。
婚約破棄のことか?

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