王子は冒険者になる!

俺は、うーんと背伸びをした。
「フランチェスコ王子?」

ジゼが不思議そうにこちらを見る。

騎士ビラットは余計だめだよな。
真面目だし。

あ、タイラーは?騎士タイラー。
ちょっとおどけた感じが
きっと頼めば・・・


おぉ。楽しくなってきた。
味方になってくれるかなー。

ちらり、と今回の視察のスケジュールと
城下の地図をみる。
「ジゼ。コレあと二部、持ってきて。」
「はい。フランチェスコ王子。
 なにをなさるおつもりで?」
「まぁ、確認、かな?」


ジゼは一瞬、きょとん としたが
すぐに下がる。

扉がパタンと閉まったら
部屋には騎士ビラットと騎士タイラー

今日はもう勉強はないから
講師が訪ねてくることもないだろう。


よし、今がチャンスだな。
「騎士ビラット。
 どうやら、アレク兄様から頂いた ペンを落としたようだ。
 きっと、訓練場かと思うんだが・・・見てきてくれないか?」

「はい。かしこまりました。」
「あ、私が、まいりましょう。」
騎士タイラーが、頭を下げる。

ちーがーう。
タイラーに用があるんだって。

俺は、首を振って
立ち上がって扉側の二人に近寄る。

「大事なモノなんだ。
 ・・・騎士ビラットに取ってきてほしいんだけど・・・
 ダメか?」

「いえ。私がまいります。
 騎士タイラー、こちらの警護を頼む。」
「はい!」

よかった。
お願い作戦、成功だな。
ちなみに ペンは本当に落としてきました。ナイス、俺。


ぱたん。
と 扉が閉まる。

あ、きゅぃーんと結界が張られたのがわかる。
魔術を学んだ今ならわかりやすいな。ほんのり赤くてビラットの魔力だ。


「よし、今なら聞けるな。」
俺は、改めて騎士タイラーに近寄った。

「は・はい?」
「あぁ、そんな戸惑わなくていいから。
 えぇっと、騎士タイラー。
 俺を信じて、協力してほしいんだけど・・・できるか?」

と、思わず俺って言っちゃった。
王子様は『僕』って言わなきゃいけないのに。

まぁ、いいか。
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