王子は冒険者になる!

ジゼ様は、
はぁ、と少しため息を付いて王子のもとへと駆け寄る。
フランチェスコ王子は、にこり、ときれいに笑った。
それをみて、ジゼ様は顔を一瞬曇らせる。
どうやら、ジゼ様は 王子の笑顔が嫌いらしい。
なんでだろ。綺麗な笑顔なのに。


フランチェスコ王子に数枚の書類を手渡される。

「あぁ、僕が視察で行くところの資料か。」
「はい。王子。
 時間等は 私と騎士ビラットとタイラーで検討しています。」
「うん。任せる。
 これは、僕のサインが必要か?」

なんていくつか声をかけながら、
戻るぞ。と言いながら 王宮の方へと歩き出す。
その後ろ姿はいつもの「フランチェスコ王子」に戻っていた。

王子は・・・セリィローズ様を・・・
嫌いで 婚約破棄したわけではない。
騎士ビラット様が「念のためにセリィローズ様の周辺警備の強化を」と指示を出していたのを
ふと思い出す。あぁ、この方は、『守るために』遠ざけたんだろう。

やべぇ、マジで。
なんで?
なんでわかるんだ?

何に、狙われているんだ?
聞いたら答えてくれるだろうか?

「おーい?騎士タイラー?行くぞ。」
「っ。 は、はい。」

あわてて ジゼ様とフランチェスコ王子の後に続く。

ともあれ、
守らねば。

オレの、力を全部 出し切っても 守らねば。

騎士タイラーは こうして
全力で 王子のちょっとした冒険を手伝うのだった。

ちなみに、目立たぬようにと、「これを使え」と服を用意したのは
ジゼディシアロー様だ。

「・・・よく見たら
 服自体に 保護魔法が込められているじゃん・・・。
 使われている糸も 魔力がこもってんじゃん。」
庶民に見える、超 高級服。マジか!!!

と、騎士タイラーが悶絶したのは 内緒だ。
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