あなたと私と嘘と愛

大丈夫、坂井さんにはバレてないと思う。
背後にうーちゃんがいてくれると思うと私も少し冷静になれる。
しっかりと言葉を交わせそうだ。


「坂井さんは何頼みますか?」

「俺はコーヒーで」


メニューを渡すとき一瞬手が触れてしまった。ヒヤッと冷たくてビックリする。


「もしかしてけっこう前から待ってたんですか?」


「亜香里が気になって仕方なかったからね。実は朝からずっとさっきの場所で待ってたんだ」


怖すぎ…
言葉を無くす。
朝からなんて尋常じゃない。やっぱりこの人は異常だ。そう確信して恐る恐る本題に入る。


「あの、クリスマスのことなんですけど…」


言い合いになり強引に坂井さんのマンションに連れていかれた時のことを切り出した。


「ああ、妹が悪かったね。電話でも話したけどそれについては謝りたいと思ってたんだ」


それについては…ね。
じゃあそれ以外のことは?口論したことについては何とも思ってないのだろうか?

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