あなたと私と嘘と愛

そんな私に気付かず彼は真っ直ぐ前を見て歩く。


「実は昔からファンなんです。あの年齢であの若さを保ってるのはすごい。演技も上手いしあの意志の強そうな雰囲気がいいですよね」

「………」


ちょっと頭が真っ白になりかけた。
どう答えていいのか、どう反応したらいいのか分からなくなる。


「……でも、あの美しさは作り物かもしれませんよ?整形だってしてるかもしれないし」


実際してるのを私は知っている。
顎をシャープにして鼻を高くしたのはもうずいぶん前のこと。

それから目尻や口元のほうれい線の施術やフェイスリフト。彼女は美容の為にあらゆることに手を出している。

私から言わせれば作り物の"美"だと言ってもいい。



「そうてすね。もしかしらそうかもしれない。でも、それでもそれを武器にして活躍してるのはやっぱりすごい。なかなか真似できることじゃないですよ。こうして人気があるのもそれ以外の彼女の魅力もあるんじゃないのかな?」


ずしんと気持ちが沈んでいく。
まさに絶賛だった。
本当の月島悠里を知ってる私はいつもどこか彼女の生き方に対して否定的だった。
彼女の自由すぎる行動に理解ができなかった。
だから尚更痛い。彼の意見が。

けど、これが世間一般のファンから見た母のイメージなんだ。
彼女のファンならではの肯定的な声。

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