初恋の君に真紅の薔薇の花束を・・・
王宮からの使者で、アレクサンドラが遠乗りに誘われたことに、アーチボルト家の居間は一瞬のうちにお通夜の様に暗くなった。
 理由は簡単で、ジャスティーヌは勉学にはずば抜けているが、独りで馬に乗れるほどの運動神経がないとは言わないが、今まで独りで馬に乗ったことはなく、当然の事ながら乗馬服など持っていなかったからだ。
「遠乗りということは、やはり、独りで馬に乗らないといけないと言うことですわよね?」
 ジャスティーヌが不安を口にすると、直ぐにアレクサンドラが答えた。
「僕と一緒に乗ればいいよ」
「いや、流石に、それは殿下の手前、認められない」
「では、ジャスティーヌが落馬したらどうなさるのです? 次は、ジャスティーヌとして殿下のお相手をしなくてはいけない大切な体なのですよ」
 母の言葉に、ジャスティーヌはさらに気が遠くなった。
「私から、殿下にアレクサンドラは乗馬が出来ないことをお伝えしよう」
「お父様、いっそ、これから乗馬の練習をはじめるから、乗馬出来るようになったら連絡しますで、半年ほって置いたら?」
 一瞬、それは良いアイデアだと思った伯爵だったが、すぐにその考えを改めた。

☆☆☆

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