月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「父上。動かないで下さいね。」

ネシャートさんに言われるがまま、王様はネシャートさんに、消毒と止血剤を塗ってもらっている。

「それにしても、ザーヒルには困ったものだ。」

王様は、床に刺しっぱなしになっている、ザーヒルさんの刀をちらっと見た。

「誰が出生の秘密を、ザーヒルに教えたのか。」

「我々も知らなかった機密情報ですからね。」

ジャラールさんが、嫌味そうに言った。

「許せ、ジャラール。ネシャートもだ。ザーヒルは、叔父上の子供、つまり私の従兄弟であるのは、間違いないのだが、王族ではないのだ。」

王様の言葉を聞いて、ジャラールさんがまた下を向く。

「……血の繋がった、従兄弟なのにですか。」

それを聞いた王様は、ジャラールさんをじっと見つめるけれども、触れてあげる事も、抱き締めてあげることもしない。

これじゃあ、ジャラールさんがひねくれるのも、無理ないよ。
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