月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
意識を取り戻した時に、真っ先に目に飛び込んできたのは、天井だった。

「どこ?」

倒れた場所は、清水寺だった。

砂漠へ来たなら、天井はないはずだ。


「今日、俺たちが泊まるホテルだよ。」

声のする方を見ると、そこには光清が。

「紅葉、病院に運ばれそうになったんだよ。」

「えっ‼ただの寝不足で!?」

私は、慌てて口を塞いだ。

「そう思って、病院じゃなくてホテルに運んで貰った。よかったよ。チェックインの時間、過ぎてて。」

何から何まで世話してくれた光清を、いっそ拝みたくなる気持ちだ。

「本当にご迷惑お掛けしました。」

私は、布団の上で正座し、光清にお辞儀。

私からの精一杯の感謝の気持ち。


「いいよ、そんな事。顔、上げて。」

「うん。」

顔を上げて見た光清は、神妙な顔。

「代わりと言っちゃあ、なんだけど。」

「えっ?」

「ジャラールさんの事、好きなの?」
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