月夜の砂漠に紅葉ひとひら~出会ったのは砂漠の国の王子様~
「はいはい。ちゃんと買って来ますよ。」

濡れた髪の毛を乾かしながら、私は二人に答えた。

「しかしねえ。」

「ねえ。」

母親と弟は、顔を見合わせて頷いた。

「何よ。」

「今時、出張が京都って。」

弟がバカにしながら、言った。

「俺、まだ高校生だけど、修学旅行で海外行った。」

「はいはい。修学旅行で何言ってんのよ。」

「いや、だから国内なんて家族旅行レベル?」

「何よ、それ。」

髪の毛を乾かしていたタオルて、弟を叩こうとしたら、避けられた。


「俺、姉ちゃんの会社だけは試験受けねえわ。」

「はあ?」

「社会人になったら、バリバリ海外出張、行きたいもんね。」


無言でもう一度、タオルを振り回したら、偶然弟に当たった。

「痛いな。」

「あんたが悪いんでしょ?」

不貞腐れた顔して、弟はリビングを出ていった。


「まあまあ、とっちでもいいじゃない?」

母親は慰めてくれたけれど、私の腹は治まりきれなかった。
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