手をつなごう
え、と声が漏れる。先輩がこちらに顔を向けた。
「そういう道もありなんですね」
「まあ俺は男だし、色々吟味した結果だけど。柏梨田に勧めるわけじゃない」
「でも選択肢の幅は広がりました」
様々な授業を受けて色んな国籍の子と触れ合った。それだけでもこの大学に入った価値はあると思っていた。
世界が広がったと思っていた。
同じくらい未来が狭まっている気がしていた。世界なんてこんなものだ、と決めつける自分がいたのも本当で。
「そりゃ良かった」
爽やかな笑顔。どきどきしてしまう。
ちょうど「ゆーと!」と遠くから声がした。