替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
(あれ…?)



不思議なことに、お父さんとお母さんはさっきと同じ普段着のままだった。



「あ、あの…お父さんたちは着替えないの?」

私の問いかけに、ふたりとも何も答えない。



「紗季……」

目と鼻を真っ赤にした母さんが、私に近付いて私の腕にバングルをはめた。
そして、その反対側の腕にはお父さんが同じようにバングルをはめた。



「な、何なの?これ……」

金色の土台の中央に、右のは赤い石、左のは黄色の石がおさまっている。



「まさか、こんな日がやって来るとは思わなかったけど…
これが、あなたの運命だったのよ…」

そう言って、お母さんが涙を拭う。



「運命……どういうこと?
何がどうしたのよ。」

「紗季…運命を受け入れるんだ。」

「お父さん!もっとわかるように言って!
そんなんじゃ、私、何もわからない。」

「何も心配することはない。」

お父さんの瞳もゆらゆらと揺れていた。



怖い……
なんだかわからないけど、何か大変なことが今起きようとしている。
たとえようのない不安に、私の体はぶるぶると震え始めた。
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