替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
せめて彼女の記憶が戻るまで、傍にいてやりたかった。
いや…正直に言うならば、ずっと傍にいたかった。



だが…私は追われている。
得体の知れない何者かに…



私には、なんらかの秘密があることを私は気付いていた。
そうじゃなければ、私はきっと両親とごく当たり前の生活をしていただろうから。



(それに……)



私は、鎖を引っ張り、胸のペンダントを手に取った。
紫の宝石に紋章らしきものの刻まれたものだ。
とても大事なものだから大切にしなさいと、子供の頃から言われていた。
見たことのない紋章だ。
どこかの国の紋章…
しかし、それにどんな意味があるのか…
私にはその意味がわからないが、私が追われていることと何らかの関係があると思うし、私を追って来た奴らは、そのことをきっと知っている。



だから、私は考えたのだ。
奴らに直接訊ねてみようと。



それは、とても無謀な考えだ。
下手をすれば、私は殺されてしまうかもしれない。
けれど、隠された秘密を知ることが出来るかもしれないし、もう追われることがなくなるかもしれないのだ。
そうなれば、私はまたサキの傍にいてやることが出来るのだ。



だからこそ、やはりリスクを冒さねばならない。
サキのために、そして私のために…

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