替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
奴らが、今、どこにいるかはわからないが、とりあえず、ココラスの町に戻り、さらに、ブラッサの町とランダスの村に戻ってみるつもりだ。



ココラスの町へ向かっている途中で、私は不意に奴らに出会った。
出くわしたのがあまりにも唐突で、私には何かを考える暇さえなかった。



奴らは私の顔を見るなり、私の傍に駆けよって来て…
両腕を男達に拘束されてしまい、私には為す術がなかった。



「少々訊ねる。
おまえと同行されていた女性はどうした?」

「え?」



同行していた女性…それはサキに他ならない。
だが、それはどういうことだ!?



「正直に申せ!
あの方はどこに行かれた?」

男は苛立った様子で、私の肩を揺らした。



その時になって、私は自分の間違いに気が付いた。
追われていたのは私ではなく、サキだったのだと…



「あの女性なら…ガザンに行くと言っていた。」

私はあえて、反対の方向を教えた。



「ガザンに?本当か!?」

「あぁ、本当だ。」

「おまえは、あの方とどういう関係だ?」

「どうって…旅の途中で知り合い、少しだけ行動を共にしていただけだ。
女一人での旅は物騒だから、しばらく一緒に行ってくれと言われた。」

私は嘘を並べ立て、男は私をじっとみつめたかと思うと、両脇の男に合図をした。
私は拘束を解かれ、男達は私を振り返ることなく、走り去って行った。
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