替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「マリウス、サキはどこにいるんだ?
アンセルさんの所か?」

「いや、そうじゃない。
実は…サキは記憶が戻ったらしいんだ。」

「えっ?記憶が?」

フェルナンの瞳が一際大きくなった。



「そうだ。そして、自分はここの城の侍女だと言った。」

「侍女だって?サキが侍女…?
それじゃあ、サキは、今、城にいるのか?」

「そうだ。」

「では、追っ手はなぜサキを探してたんだ?」

「それはまだわからない。
とにかく、明日、サキに会いに行ってみよう。」



俺はフェルナンに詳しいことを話さなかった。
話したら、フェルナンが心配するだろうと思ったからだ。



本人に聞けば、全てはわかるんだ。
つまらない心配をさせることはない。



「フェルナン、飲もう。」

「いや、私は酒はあまり強くないのでな。」

「じゃあ、何か食べたらどうだ?」

「いや、腹は空いてない。」



フェルナンはサキのことが心配なのだろう。
俺は軽率だった。
フェルナンにサキのことを頼まれていながら、サキの言葉を鵜呑みにした。



俺は自分のことを優先し過ぎたのかもしれない。
サキの話は、考えれば考える程、おかしいと思えるのに、深く考えなかった。



(本当のことを知らねば!)



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