替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「いたたた……」

ダンスの特訓のせいで、体のあちこちが痛む。



(サンドラさん、スパルタなんだから!)



約一か月で、お城に戻らなきゃいけないんだから。
そうのんびりしているわけにはいかない。
それはわかってるんだけど…



ベッドで痛みに耐えながら、ふと頭に浮かんだのはフェルナンさんの顔だった。



(早く忘れなきゃ……)



今更考えてもどうにもならない人だもの。
私は、ヴァリアン王国の王子と結婚するんだから…



でも…心配な気持ちはどうにもならない。
フェルナンさんは、追っ手に捕まったりしてないだろうか?
酷い目に遭ったりしてないだろうか?



フェルナンさんとはしばらく一緒にいたんだもの。
気になるのは、心配するのは当然のことだよね。



(違う……)



やっぱり、私はフェルナンさんのことが好きなんだ…
でも、そんな本心はなくしてしまわないといけない。



(そうでなきゃ、辛すぎてどうにかなってしまいそうだもの…)



じわっと瞳に涙が浮かび…
私はそれを指で拭った。



こんなことで、泣いてなんていられない。
もっと強くならなきゃ…!
私は、運命に逆らうことは出来ないのだから…
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