替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「フェルナン…今日は来てくれてどうもありがとう。
本当に楽しかった。」

「こちらこそ、どうもありがとうございました。」

「すぐに馬車を用意するから…」

「いえ、今日は歩いて帰ります。
今夜は月も明るいようですから…」



そんな会話を交わしながら歩いていた時…
私達は、ある老婆に出会った。
城にいるのがどうにも不似合いな老婆だ。



「ルーサー様……」

老婆は、立ち止まり、ルーサーに対して頭を下げる。
そしてその顔を上げた時…私を見て酷く驚いたような顔をした。



「ヒルダ……どうかしたのか?」

「え?い…いえ。何も……」

そう言うと、老婆はその場所からそそくさと立ち去った。



「……おかしな奴だな。」

「ルーサー様…今の方は?」

「城付きの魔法使いだ。
魔法使いの中でも、一番昔からいる者だ。」

「そうですか……」

魔法使いは、普通の人間より寿命が長い。
ヒルダという魔法使いは、きっと相当な年齢なのだろう。
私を見て驚いていたようだが、どういうことだろう…?



(もしや、あの魔法使いは、私のことを知っているのか…!?)



不意に頭に浮かんだその想いに、鼓動が速くなった。
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