替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「シャルア…どうかしたのか?」

「いえ…私が、こんなに回復出来て、こんなに大勢の方が来て下さったことがとてもありがたくて…」

「そうであったか。」

陛下は私の嘘を信じて下さり…
舞踏会は、大盛況の中、幕を閉じた。







「お疲れ様でした。」

部屋に戻った途端、私は思わず泣きだしてしまった。
突然のことに、侍女達が戸惑う。
今日という日を無事に乗り越えられたというのもあったとは思うのだけど、やっぱり、一番はフェルナンさんのことだと思う。



まさか、今日会えるなんて思ってなかったし…
ついに、本当の気持ちを打ち明けてしまったし…



私は、ルーサーさんかマーカスさんと結婚する身…
言うべきではなかったのかもしれない。
言っても、フェルナンさんを苦しめるだけなのに…



それなのに、言ってしまった。
言わずにはいられなかった…



フェルナンさんの涙が、頭をかすめた。



あれは、私が流させた涙…
フェルナンさんを傷付けた証…



(ごめんなさい、フェルナンさん……)



辛くて、涙が止まらない。
だけど、そんな身勝手は私には許されない。
この後には、晩餐会が控えているのだから…



「顔を洗う水を持って来て下さい。」

私は、侍女に命じた。
< 211 / 257 >

この作品をシェア

pagetop