替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
「サキ…どういうことなんだ?
フェルナンが貴族というのは…
舞踏会でも彼を見かけて、どうしてこんなところにいるのか、不思議に思ってたんだ。」

私はさっきルーサーさんから聞いた話を、マリウスさんに話して聞かせた。



「そんなことがあったのか…
最後に奴があんたと踊ってるのを見て、俺はどれだけ驚いたことか。
フェルナンとは、何か話したのか?」

「え……」

そう言われても、やっぱりなんとなく話し辛い…



「何か話したんだな?
それで、フェルナンは何と…?」

「えっと……どうか、幸せに……と。」

フェルナンさんの言葉を思い出したら、急に涙が込み上げて来た。
私は必死で涙を我慢する。



「……そうか。
フェルナンの奴…最後にどうしてもあんたに会いたかったんだな。
でも、これで、きっとあきらめがついたはずだ。
だからこそ、ルーサー王子の元を離れた。
……きっと、フェルナンは、ルーサー兄弟がどんな人物か探りに行ったんじゃないかと思う。
あんたを任せて大丈夫な相手かどうかを、な。
そのために、貴族の振りをしたのだろう。」

言われてみれば、確かにそうかもしれないと思えた。
そうでなきゃ、フェルナンさんがヴァリアンに行くはずはないのだから。



(フェルナンさん…そんなに私のことを……)



我慢してた涙が、どうしても堪えきれなくなって…
私は、子供のように泣いてしまった。
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