替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
ヒルダは言った。
トーマスに相談され、悩んだ挙句、二人でその子を育てることにしたのだと。



確かに、トーマスは優しい男だった。
私が子供の頃からトーマスは城に仕えており、私のこともとても可愛がってくれていた。
信頼出来る人物だと思っていたし、私に逆らった事など一度もなかった。
だからこそ、私は彼がそんな勝手なことをするとは思ってもみなかったのだ。



ヒルダの話によると、トーマスは母親にその子を託したらしい。
誰にもみつからないように、森の中でひっそりと暮らしていたようだ。



トーマスが亡くなって何年かが過ぎたある時、ヒルダがそこを訪ねたら、そこはもぬけの殻だったという。
その後、その子の行方はわからなくなっていたらしいのだが、ある時、ヒルダは城の中でその子に出会った。



最後に見たのは、まだ子供の頃だというのに、ヒルダには一目でわかったらしい。
それが、私の産んだ子なのだと。



「面差しがマグダナ様に良く似てらっしゃいますから。」



ヒルダはそう言って、笑った。
トーマスの付けた『フェルナン 』という名も符合していた。



ヒルダは、ある時、フェルナンの右肩に痣があるのを確認し、間違いなくあの子だと確信したそうだ。
右肩の痣...それは、シルヴェールの右肩にも存在する。
つまり、フェルナンはシルヴェールの子だったのだ。
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