替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
異界の門については、すでに城を離れたハリードが知っていました。
もうかなりの高齢ながらもまだかくしゃくとしており、城の学者たちにいろいろと指示を与えてくれたようです。



門の場所もわかり、妹を呼ぶ方法もわかり…これでうまくいくと思っていたのですが、まだ問題がありました。
門を動かす燃料のようなロゼッタ石が、なかなか集まらなかったのです。
この石は、元々希少な石だそうですが、しかし、特に美しいわけでも、高値で売れるわけでもなく…以前は、火薬にも使われていたようですが、今ではあまり使われなくなり、石の愛好家くらいしかロゼッタ石に関心を示す者はいないようです。



そういうものだけに、ロゼッタ石を集めるのはとても大変だったようです。
ですが、そう時間をかけているわけにもいきません。
学者が計算した最小限のロゼッタ石が集まった時点で、異界の門を動かしました。
しかし、本来なら、そこに現れるはずの妹は現れなかったのです。
どうやらロゼッタ石が足りなかったようです。



学者たちは、妹がこの世界には来ているはずだと言います。
私も、それを信じるしかありません。
そうでなければ、我が国は滅びてしまうかもしれないのですから。
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