替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする




「……少し休むか?」

「は、はい。」



ランダスの村を出てからが遠かった。
しばらくするとわりと広い道に出て、行き交う人とも出会うようになった。
皆、それなりに重そうな荷物を持っていたり、荷車を引いてたり…
子供でさえも、文句を言わずに歩いてる。えらいな。



途中で、馬車が追い越して行くのを見た。
でも、フェルナンさんが乗らないってことは、馬車は運賃が高いのかもしれない。



(頑張らなきゃ…!)



足だけじゃなく、腰まで痛くなって来て、思わず音をあげそうになった時、ようやくフェルナンさんが休もうかって言ってくれた。
出来れば、冷たい飲み物とちょっとしたスイーツでも食べたいところだけど、そんなものがここにあるはずがない。
ただ、道端に座るだけだけど、それだけでも疲れた体にはありがたかった。



「だいぶ疲れたみたいだな。」

「え…は、はぁ…」

嘘でも「疲れてない。」とは言えなかった。



「え?」

フェルナンさんが差し出したのは、水筒みたいなものだった。
もちろん、中身は山の湧き水だ。



「あ、ありがとうございます。」

もう温くはなってたけれど、疲れた体には染み渡った。
水筒を返すと、躊躇いもせずフェルナンさんがそれを飲む。
なんだかちょっとドキッとした。



「さぁ、もう少しだ。頑張ろう!」

「は、はいっ!」



結局、ブラッサの町に着いたのは、それから一時間以上歩いてからだった。
< 35 / 257 >

この作品をシェア

pagetop