替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
靴屋はすぐに見つかった。
さっきのお店と、品ぞろえはそう変わらない感じだ。
似たような靴ばかりだから、多分、値段はどれもそんなには変わらないと思うのだけど、値札らしきものがどこにもないからよくわからない。



「あの、フェルナンさん…」

値段のことを訊こうと私が顔を上げた時、フェルナンさんの顔が妙に強張っていることに気が付いた。



(え……?)



「あ、あの……私…なにか…」

「走れ!」

「えっ!?」

フェルナンさんは、私の腕を掴んで、人混みの中を走り出した。
どういうことかわからず、とにかくフェルナンさんにひきずられるようにして走ったのだけど、ふと後ろを振り向くと、数名の男性が私たちの後を同じよう走って来るのが見えた。
そう、つまり、私達は何者かに追われているのだ。



俄かに、鼓動が速くなった。
なぜ、私達を追いかけるの?
あの人たちは、一体、誰?



怖くて、後ろを振り向くことさえ出来なくなった。
私達は、走り続けた。
ただ、ひたすらに…
息が上がって苦しいけれど、止まったら何をされるかわからない。



「こっちだ!」

町はずれの廃屋に、フェルナンさんは私を引っ張って行った。
今にも崩れそうな廃屋の片隅で、私は息を潜め、体を震わせた。
やがて、数人の男性が近くを走り抜ける音がして……
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