替え玉の王女と天界の王子は密やかに恋をする
確かに、私もおかしいとは思ってた。
人と接触するな!なんてこと、普通は言い遺すはずがない。



でも、それは、一体どういうことなんだろう?
素直に考えるなら…
フェルナンさんのことを守りたいってことよね…?
でも、誰から?
何のために?
そんなこと、私にわかるはずがない。



「思い当たることは、本当に何もないのですか?」

フェルナンさんは俯いたまま、何も答えなかった。



「あ、ご、ごめんなさい。」

「……ひとつだけ……」

「……え?」

「ひとつだけ……あるにはあるんだ。」



それが何なのか、すごく気にはなったけど、あえて訊くことはしなかった。
フェルナンさんもきっと話したくないだろうし、訊いても私に何かがわかるとは思えないから。



「そ、そうなんですね。それは…」

「しっ!」

フェルナンさんが、私の腕を取り、茂みの中に引き込んだ。
そこで、私は数人の足音を聞いた。
足音は、私たちの傍にどんどん近付いて来る。
私は恐怖にすくみ上り、その場で固く目を閉じた。



「急げ!やつらはきっとこっちから帰ってるはずだ。
何とか追いつくんだ!」



耳に飛び込んできた声に、私は思わず悲鳴をあげそうになり、それを懸命に堪えた。
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