大天使に聖なる口づけを

王宮の中で働くというのがどういうことなのか、エミリアはこれまで考えてみたこともなかった。
揃いのお仕着せを着て王子の身の回りの世話をする侍女とたちは、実は良家の子女ばかりらしい。
突然入ってきた新入りたちに、ほとんどの者はいい顔をしなかったが、中には親切な者もいた。

「私たちみたいな下っ端は、王子の物に直接手を触れることもできないから、高貴な身分の方に間に入ってもらうんですよ」

アニータと名乗ったエミリアと同じくらいの年齢の侍女は、てきぱきと動き回りながら、エミリアたちが失敗をして叱られたりしないようにと、よく気をつけてくれた。

「この部屋にある物には手を触れないようにして、掃除もするんです」
「ふーん」

面倒な世界なのだなと、エミリアは感心するばかりだった。

棒の先に布を付けた道具で調度品の埃を払っていると、部屋の前の廊下のほうが騒がしくなる。

慌てて掃除道具を隅に隠し、扉の両脇にズラリと二列に並んだアニータたちに倣って、エミリアとフィオナも、部屋の主を迎え入れる体勢を取り、頭を下げた。
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