大天使に聖なる口づけを
「リリーナが天使だったら、お前だって半分天使だろ?」
アウレディオに指摘されて、エミリアは初めてその事実に気がついた。

「そっか。そうなるのか……!」
なんとも現実感がない。
急にそんなことを言われても、外見がああな母はともかく、自分のこととしては考えられなかった。

しかし先日の式典での出来事も、エミリアが天使の力を使ったのだとするならば、全て説明がつくのだ。
これまで「こうだ」と思っていた自分という人間が、根本から覆されていくような気がして、エミリアは眩暈を感じた。

「大丈夫か?」
心配げにアウレディオが尋ねるので、この際、近くに一つだけあった椅子に、優先的に座らせてもらう。
「大丈夫……だと思うわ……」

微妙な返事にアウレディオが笑った。
「なんだよ、それ」

そのいつもと変わらない声に、大きく動揺していたはずの気持ちがなぜだか落ち着いていくから不思議だ。
エミリアはさっきから考えていたことを、口にしてみた。

「ディオは知ってたんでしょ? 私の変な能力のこと……」
「何?『天使の時間泥棒』ってやつ?」

わざと茶化した言い方をするアウレディオは、子供の頃のような無邪気な顔をしている。
つられたようにエミリアの表情も緩んだ。
笑顔のアウレディオに向かって、にっこりと頷く。

その途端、アウレディオはなぜか少し不機嫌になった。
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