大天使に聖なる口づけを
「ディオの代わりに騎士見習いになった子たちが、偉そうに言うんだもん。ディオは腰抜けだから逃げたんだって……私追いかけてって、文句言ってやりたかった……そうできなかったのが今でも悔しくって悔しくって……!」
感情が高ぶるあまり、涙が溢れてきた。

そんなエミリアの頭を、アウレディオが宥めるように撫でる。

上目遣いにその顔を見て、エミリアは泣き笑いの顔になった。
「ごめん……もう三年も前の話だ……」

「本当に……」
クスクスと笑うアウレディオの顔を見ていると、エミリアの心は晴れてくる。

怒りもためらいも、さっき一瞬感じた、
(私って人間じゃないの……?)
なんて不安も、どこかに消し飛んでいく。

アウレディオが笑うと思わずエミリアも笑顔になる。

「……何だよ?」
なんて言いながら、本当は優しい眼差しを注いでくれる相手。
いつも安心できる、どんな時でも温かい気持ちになれる存在。
アウレディオとのやり取りは、きっとエミリアにとっては必要不可欠だ。

(だからディオ……これからも、大人になってからもずっと……いつまでも私の大切な幼馴染でいてね……)
照れ臭くて絶対に面と向かっては言えない言葉を、エミリアは心の中だけで呟いた。

夜空に瞬く星にも負けないアウレディオの蒼い瞳の煌きを横目に見ながら、いつまでも、いつまでもこの関係が続くことを願った。
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