大天使に聖なる口づけを
学校に入学して一ヶ月。
エミリアがようやく学校にも慣れたかという頃、彼女の母はある日突然に姿を消した。

「お母さんは故郷に帰ったんだよ」
父に何度説明されても納得がいかなかったエミリアは、泣きながら近所中を捜しまわった。
『お母さーん、お母さーん、お母さーん!』

『エミリア?』
異変に気づいたアウレディオが駆けつけた時には、エミリアは服も泥だらけで、すっかり泣き濡れた状態だった。

「ディオ……お母さんがいなくなっちゃったよぅ……」
抱きつくエミリアの体を、アウレディオはハッと自分から引き剥がし、肩を掴んで顔をのぞきこみ、一言一言ゆっくりと言い聞かせた。

『俺が捜してくる。絶対に捜してきてやるよ。だからエミリアは家に帰って待ってて』
力強い足取りで駆けだしていったアウレディオは、そのまま一週間ぐらい帰ってこなかった。

(大好きなお母さんがいなくなってしまった……ディオも帰ってこない……)
エミリアはショックのあまり、そのあとしばらくを家の中だけで過ごした。
アウレディオに言われた『待ってて』の言葉だけを、ただ忠実に守り続けた。
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