大天使に聖なる口づけを
一歩も家から出ないまま、いったい何日が過ぎたのだろう。
カランカランと鳴った玄関扉の鐘に、ぼんやりと立ち上がったエミリアは、

「ディオ?」
微かな希望をこめて、扉から入ってこきた人物を見つめた。
  
そこに立っていたのは、アウレディオよりかなり大きな男の子だった。
艶やかな黒髪も、その間から見え隠れする紫色の瞳も、アウレディオとは似ても似つかなかった。

「アルフレッド? ……アル?」
驚き、目を瞠るエミリアに向かって、アルフレッドはコックリと頷く。

「昨日もその前もずっと学校休んでるみたいだから、迎えに来た」
ぶっきらぼうな言い方はいつもどおりだったが、その時エミリアは、不思議とアルフレッドを怖いとは思わなかった。

「行くぞ」
という声につられて、

「うん」
と普通に返事する。

数日前から床に放り出したままだった通学用の鞄を拾って、エミリアはアルフレッドのうしろについて学校へと向かった。
一言も会話は交わさないまま、二人は学校までの道のりを一緒に歩いた。
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