大天使に聖なる口づけを
翌日、再びアマンダの店を訪れたアルフレッドは、伸び放題になっていた髪をさっぱりと切り揃えていた。

紫色の瞳がなおいっそうはっきりと見えるようになって、エミリアは動揺を隠せない。

(ディオが変なこと言うから……なんだか変に意識しちゃうじゃない……!)
エミリアのほうはアルフレッドの一挙手一投足にドキドキしているのに、当の本人はそんなことはおかまいなしのようだ。

「凄い顔だなエミリア。まるで百面相だ」
同じことをもしアウレディオに言われたとしたら、拳をふり上げて猛然と怒るところなのに、そうしようと思わないのはどういうことなのだろう。
誰に尋ねたとしても、返ってくる答えはおそらく一つ。

(私はやっぱり……アルのことが好きなの?)

自らに問いかけるエミリアは、
「お邪魔だろうから、私は一人で帰るわ」
といなくなったフィオナに別れを告げ、アルフレッドと二人で、夕暮れの街を家へと急いだ。
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