大天使に聖なる口づけを

星の瞬き始めた街を、エミリアはアルフレッドと二人、子供の頃のように手を繋いで帰った。
恥ずかしいような嬉しいような不思議な気持ち。

頭の中ではアルフレッドの『焼きもちだったんだよ』や『エミリアがいる町に』という言葉が、何度も何度もくり返されている。

(どういうことだろう……? まさか……? まさかね?)
自分の手を握るアルフレッドの大きな手を見つめながら歩き続けるエミリアは、坂道のてっぺんに自分の家が見えて来た瞬間、その玄関扉の前に、人影が立っていることに気がついた。

月の光を反射して、昼間よりも眩しく輝く淡い色の髪。
挑むようにこちらを見据える大きな蒼い瞳。

エミリアとアルフレッドは、どちらからともなく繋いでいた手を離した。

アウレディオは月明かりの中、冷たくも見えるほど冴え冴えとした表情をしていた。
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