大天使に聖なる口づけを

騎士団の宿舎に設けられた医務室でエミリアが目を覚ましたのは、もう窓から夕日が射しこむような時間だった。模擬試合の決勝が行われていたのは昼過ぎの事だったので、かなり長い時間眠っていた計算になる。

医療衣を着た医師からは、やんわりとたしなめられた。
「睡眠はきちんととらないといけませんよ」

目隠しにもなる衝立ての向こうから、フィオナが顔を出した。
「どうやらやっとお目覚めのようね、お姫さま。エミリアが倒れたあと、それはそれはたいへんな騒ぎだったのよ」

にやりと唇の端を吊り上げるフィオナは、珍しく嬉しそうにことの次第を報告してくれた。
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