大天使に聖なる口づけを
「なるほどな」
ため息を吐きながら呟いたアウレディオを、エミリアはふり返った。

「え? 何? ディオわかったの?」
アウレディオは、呆れたような、それでいて哀れむような視線をエミリアに向けた。

「……エミリア。お前が『聖なる乙女』として、そのミカエルとかいう奴にキスするんだよ」
「は?」

あまりの内容に、エミリアの頭が言葉を理解することを拒絶する。

「な、な、なんですってええ!」
たっぷり三秒間はそのまま固まったあと、大声で叫んで後ろに飛び退ろうとしたエミリアの体を、小柄な体には似あわないほどの力で、母が抱きすくめた。

「ごめんね……ごめんなさいねエミリア……」
ハラハラと涙を零しながら何度も謝られたら、嫌だと暴れることも、逃げ出すことも、エミリアはどんどんできなくなっていく。

「う……うん。お母さん」
アウレディオが人の悪い笑みを漏らす気配を、隣にひしひしと感じながら、母の華奢な背中を宥めるようにさすり、引きつった笑顔でそう答えるのが、エミリアのせいいっぱいだった。
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