大天使に聖なる口づけを

明くる朝、城の前で会ったフィオナにエミリアは、
「お菓子の話は、フィオナの言うとおりだった」
と報告した。

『食べた者が作った者に好意を抱くお菓子』

あまりにも胡散臭い話なのに、フィオナは驚きもせず、
「そう。やっぱり……」
と頷く。

彼女が人並み外れて淡白なことに、そして日頃から『オーラ』で相手を判断しているからなのか、常識から逸脱した部分があることに、エミリアはこんなに感謝を覚えたことは今までなかった。
しかし――

「それじゃあとは、例の近衛騎士とエミリアがキスしたら全て終りね」
などと、そこまであっさりと言い切られることを望んでいるわけではない。

「そ、そんな簡単にキスなんかできるわけないでしょう!」
焦るエミリアの背後に目を向け、フィオナがポツリと呟いた。

「あ。噂をすれば、そのランドルフ・ウェラードが来たわ」
反射的にエミリアは、フィオナの陰に逃げこんだ。

もちろん華奢なフィオナの背後にエミリアがすっかり隠れるはずもなく、ほとんど丸見えなのだが、エミリアには自分がどうしてそんなことをしてしまったのか、その理由さえわからない。
気がついた時にはもう体が勝手に動いていた。
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