大天使に聖なる口づけを

折りしもその日は、国を挙げての感謝祭の初日だった。

国王家族が、城の中庭に張り出した露台に出て、集まった国民の代表者たちに挨拶をするという予定がある。
主に城の周りの警備に当たっていたエミリアたちも、この時ばかりは少しでも多くの人手がほしいということで、城壁の内側の警備を任された。

「じゃ。もし人波に押しつぶされそうになったら、遠慮なく逃げていいから。くれぐれも怪我をしないように」
爽やかに言って、去っていったランドルフの背中を見送って、エミリアは改めて中庭に集まった人人人の山を見渡した。

「うわー……これじゃディオがどこにいるのかもわからないわ……」
フィオナは、あまりにも危険ということであらかじめこの任務からは外されていた。

ランドルフはエミリアも、と言ってくれたが、
『いえ。こいつは大丈夫です』
とアウレディオが譲らなかった。

そのアウレディオとも持ち場は別になり、あまりにも人が多すぎて、どこにいるのだか捜すこともできない。
「別に近くにいなくちゃいけないってわけでもないんだけど……」

誰に向かってか言い訳しながら、エミリアは豪華絢爛な宮殿をふり仰いだ。
白亜の宮殿と称される真っ白な建物は、日の光を浴びていつにも増して輝いている。
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