幼なじみとナイショの恋。

私達と同じように昇降口で雨宿りしていた生徒達が、今だとばかりに飛び出していく。



「俺らも行くぞ」


「え?わっ…!」



はるくんの大きな手が私に触れる。


雨から守るように私の頭を自分の胸に引き寄せ、はるくんは雨の中を走り出す。



キラキラ。


キラキラ。



不思議だな。


世界って、こんなにも色鮮やかに見えたっけ?



憂鬱でしかない雨も、水溜まりの水が跳ね上がる音も、


はるくんと一緒なら、こんなにも素敵なものに思える。



「大丈夫?」


「……うん。大丈夫。
ふふ。何だかちょっと楽しいね」





はるくんの体温。


はるくんの息遣い。


こんなにも近くに感じる。


今だけは、はるくんをひとりじめ。



やだな。


今にも想いが溢れ出してしまいそうだ。


はるくんに“好き”って伝えることができたら、どれほど幸せだろう?って考えてる。


だけど、私は伝えない。


伝えられない。



古賀さんの言う通りだね。


きっと私はいつか後悔する。


今日のこの瞬間を思い出して“あの時伝えていたら”って。


この優しい手で、はるくんに大切にされる女の子を見ながら、そんなことを思うのだろう。
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