幼なじみとナイショの恋。

優しくて、美人で、頭が良くて。


オマケに教え方も凄くわかりやすくて。


才色兼備とは、まさしく茜さんみたいな人のことを言うんだと思う。


私の周りって、どうしてこうもキラキラした人ばかりなのかな。


私自身は、こんなに冴えなくてつまらない人間なのに。


神様は、どれだけ私に劣等感を味あわせれば気が済むのだろう?





今日の授業は午前中の一時間程で終わった。


茜先生を見送るためノートや参考書を片付けていると、茜先生が「あ!そうだ!」と手のひらを打った。



「ねぇねぇ、結衣ちゃんさ、こういうのって興味ある?」



茜先生は、カバンの中をガサゴソ漁りながらそう言うと、小さなコンパクトのようなものを手に取り、私の前へと差し出した。


ペットボトルのキャップくらいの大きさのそれは、何かのお花がモチーフになっているようで、サイズ感といい見た目といいとっても可愛い。



「えっと……これは?」


「リップチークっていうんだけどね。頬や唇に色付けることが出来るメイクグッズだよ」


「リップチーク……」



普段メイクなんてほとんどしたことがない私には、使い方なんてさっぱりで。


どう使うんだろう?と考えながら、手のひらに乗っているそれをまじまじと眺めていたら。



「つけてあげるよ」と茜先生がニッコリと微笑んだ。
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