幼なじみとナイショの恋。
その話をしている時のお母さんの顔が、せっかく念願が叶うというのにどこか苦しそうだったのはなぜなんだろう?って、未だにその理由は分からないまま。
だけど、この街に来てからお母さんが変わったのだけは分かる。
田舎に暮らしていた時の優しくて穏やかなお母さんはどこかへ行ってしまった。
毎日、まるで何かに追われているように仕事をしている。
私の顔も見ず出かけ、私の顔も見ず眠る。
“おはよう”や“行ってきます”の時間さえ惜しいみたい。
でもそれは、仕方のないことだって思ってる。
だってきっと、たった一人で私を育てていくのは、とても大変なことだから。
私だって、これ以上お母さんの負担になんてなりたくない。
文句なんて言える立場じゃない。
お母さんに、もうこれ以上辛い思いをさせないためなら、たとえ叶えたい未来があったとしても、
私はその思いに蓋をして、諦める努力をする。
それがきっと、私がお母さんに出来る唯一のこと。
そんなことを考えていたら、せっかくのいちごジャムトーストが砂のような味に変わってしまった。
それ以上食べる気がしなかったので、再びそれにラップをして、スクールバッグ片手に家を出た。